重要文化財 丈六(2m65cm)の不動明王
本尊の不動明王は、近年まで藤原忠平請願、伝教大師彫刻のものとされてきましたが、1006年藤原道長が自身の40歳の賀に際して仏師の祖・康尚に作らせたものであることが分かりました。像高は2m65cmの一木造りで、木造不動明王坐像としては日本一の大きさを誇り、国の重要文化財に指定されています。
藤原道長の「御堂関白記」によれば
・1005年02月21日 丈六の五大尊像造作開始
・1006年07月27日 五大堂の立柱・上棟
・1006年08月07日 丈六の五大尊を新しく造営した五大堂に移す
・1006年10月25日 五大明王開眼供養(二十四節気「小雪」)
・1006年12月24日 五大堂室礼開始
・1006年12月26日 五大堂供養・大般若不断読経
・1007年02月05日 五大尊法結願
とあり、長い期間をかけて調伏・息災を祈願したことが分かります。
現在では、開眼の日(二十四節気の「小雪」・新暦の11月22日頃)を追善供養として、十万・十方・土力の因縁から前後10日間の大根焚きを行っています。
夢中の印 読むこと能わずんば如何念ず
藤原道長公は夢の中で不動明王より特別なこの印を授かったと伝わります。その印は決まった読み方が無いため、古くは
・「土力(どりき)不動」…土地の守護を表し、火災などの厄災を除ける
・「十万(じゅうまん)不動」…十万の眷属を従えて衆生救済をする
・「十方(じっぽう)不動」…十方遍く不動の力を照らす
などと称され、この印の札(屋守護札)を門戸に貼れば、火災・風疫諸難を除け、子孫繁栄福徳円満にご利益があると伝わります。また、同聚院には次の話が伝えられています。
【「じゅうまん」の逸話】
道長公が朝夕と不動明王を崇敬していたところ、一夜夢とも幻ともなく数多の悪鬼が群衆して「我らこれより諸国に横行して火を放ち、水を溢らせ、悪病悪疾を起こして人民を悩ましめてはこれを見て楽しまん。」と相議していました。その時、壇上の不動明王が大光明を放って大威神力を現じたところ、悪鬼達はひれ伏して大慈心をおこして「一万の軍勢を率いて明王の神威を助け、一切衆生を守護し、悪事災難を除かん。」と誓いを立てて、「一万」の文字を書いてこれを明王の御前に捧げました。明王はすぐに筆を取りこれに縦1画を加えてこれを「十万」としたところ諸々の悪鬼はその下知を受けて礼拝して立ち去りました。
決まった読み方が無いとは言え霊験あらたかなお印であることには変わりませんが、読む以前のところ、つまり父母未生以前の不動の力を掴むことができるかどうかを問われている重要な印となります。